文献No.202
ヒトの栄養のためのn-3系長鎖多価不飽和脂肪酸の代替供給源としての家禽肉とタマゴ
Alice Cartoni Mancinelli et al., Poultry Meat and Eggs as an Alternative Source of n-3 Long-Chain Polyunsaturated Fatty Acids for Human Nutrition. Nutrients, 2022, 14, 1969
【要旨】
ヒトの健康に対するn-3系長鎖多価不飽和脂肪酸(n-3 LC-PUFA)の有益効果は広く知られている。ヒトはn-3LC-PUFAを体内で十分合成できないため、食事からある程度摂取する必要がある。しかし、殆どの欧米人の食事では、食習慣故にn-6/n-3比のバランスが取れておらず、n-3 LCPUFAに富む魚の摂取量は世界的な推奨値を満たしていない(世界全体での不足量は~347,956 トン/年)。それ故に、新規かつ持続性のn-3 LC-PUFA源を見出す必要がある。家禽製品はその生理的特性と肉およびタマゴとして広く消費されていることから、ヒトへn-3 LCPUFAを供給できる。
本研究は、家禽製品中のn-3 LC-PUFA含量を高め保持するため、飼育並びに生産後に適用すべき主な対策についての総括を目的とする。この対策には、αーリノレン酸(ALA)あるいはLC-PUFAの補給、あるいはLA(リノール酸)/ALA比と抗酸化物の濃度を改善してn-3 LC-PUFAを高めることが含まれる。さらに、遺伝子型、飼育系、輸送ならびに調理方法が家禽製品のLC-PUFAに影響する。生産系の全てについて多面的観点から対応することによって。家禽製品中のLC-PUFAの強化と保存ができよう。
文献No.192
高齢者のタンパク質摂取量を増加させるための食品基盤の介入試験:タマゴ摂取への挑戦と促進(英国)
Emmy Van den Heuvel et al., Towards a Food-Based Intervention to Increase Protein Intakes in Older Adults: Challenges to and Facilitators of Egg Consumption. Nutrients, 2018, 10, 1409.
【要旨】
タンパク質の摂取は健康維持に重要である。タマゴは高タンパク質食品として、タンパク質が不足しやすい高齢者にとって魅力的な食品で、タンパク質の摂取状況を改善する可能性を秘めている。しかしながら、今日まで高齢者のタマゴの摂取量やタマゴの摂取への挑戦あるいは促進について調査した介入研究はほとんどない。
本研究は、タマゴの摂取に対するいくつかの挑戦と促進の相対的重要性に焦点を当て、55歳以上の英国の高齢者1,082名を対象に、身体基礎情報および生活習慣についての郵便アンケートによる横断研究で、分析に適した230名(女性110名、年齢55~80+歳)の回答結果を解析したものである。
その結果、タマゴの摂取量は1〜89個/月で、平均±標準偏差は18±13個/月であった。さらに主成分分析でタマゴを摂取する/しない理由を抽出して23項目について主成分解析を行ったところ、習慣的なタマゴの摂取は10項目と関係があった(最小のβ = 0.14, P = 0.04)、加えてタマゴの摂取量はタンパク質摂取量(β = 0.24, P < 0.01)、年齢(β = -0.16, P = 0.02)、BMI(β = 0.14, P= 0.03)とも関係があることが明らかになった。
高齢者でのタマゴの摂取増加策としては、好み、風味および多様性の改善、毎日食べる食品としての推奨、タマゴを食べる人と食べない人の既成概念の低減、そして加齢の食品の摂取への影響を認識している人々への卵の推奨に焦点を当てなければならない。一方で、意外なことにコストパフォーマンスの強調は逆効果になる可能性が認められた。今後は高齢者のタンパク質摂取の改善に向けて、タマゴの摂取を促す戦略の評価が必要となる。
文献No.189
南アフリカの高リスク周産期クリニックに通う妊婦のコリン摂取量並びにタマゴおよび乳製品摂取量の関連:NuEMI研究
Liska Robb et al.,Choline intake and associations with egg and dairy consumption among pregnant women attending a high-risk antenatal clinic in South Africa: the NuEMI study. BMC Pregnancy Childbirth. 2021, 21(1):833.
【要旨】
妊娠中でのコリン摂取の重要性は知られているが、摂取量は十分ではない例が多い。南アフリカのブルームフォンテーンの高リスク妊婦クリニックに通院している妊婦を対象に、総コリン摂取量、主要なコリン供給源およびコリン摂取量とタマゴ・乳製品摂取量との関連を調べる横断研究を実施した。
食事摂取データは訓練を受けた調査員が定量的食品頻度調査票(QFFQ)を用いて収集した。コリン摂取量はUSDAの一般食品コリン含有量データベース(Release 2)より算出した。変数減数選択法によるロジスティック回帰分析を用いて、タマゴおよび乳製品の摂取が目安量(AI)未満のコリン摂取と独立して関連しているかどうかを調べた。
1日のコリン摂取量の中央値は275 mg(四分位範囲185 mg - 387 mg)であった(n= 681)。参加者のほとんど(84.7%)でコリン摂取量のAIである450 mg/日に満たなかった。コリンの主な摂取源は肉と肉製品、穀類、タマゴ、乳製品であり、その中でも全脂乳、トウモロコシ粥、黒パン、揚げジャガイモおよび揚げパン(フェトクック)の寄与が大きかった。コリンの摂取目安量不足は、タマゴおよび乳製品の摂取量が少ないことと有意に関連していた(それぞれP < 0.0001およびP= 0.0002)。
本研究に参加したほとんどの妊婦で、コリン摂取量がAIを下回っていた。妊婦を対象とした公衆衛生メッセージとして、タマゴや乳製品などコリン摂取に大きく寄与する食品の摂取を促すことが推奨される。
文献No.184
タマゴを摂取する食事パターンは栄養推奨量を満たし、食事の質の向上と栄養不足の解消に役立つ
(観察研究)
Yanny Papanikolau et al., Patterns of Egg Consumption Can Help Contribute to Nutrient Recommendations and Are Associated with Diet Quality and Shortfall Nutrient Intakes. Nutrients, 2021, 13(11): 4094.
【要旨】
米国人については、典型的な食生活パターンでのタマゴの摂取が食事の質にどのような影響を及ぼしているのかについての情報は限定的である。本研究は、2001年から2016年の米国健康・栄養調査(NHANES)と食事の質の指標であるHealthy Eating Index2015(HEI) を用いて、卵と栄養素の摂取量の関係を調査した。被験者を卵摂取群(45,791人)と卵非摂取群(20,003人)に分け、24時間思い出し法により栄養摂取量と栄養充足度の違いを評価した。
タマゴの摂取にはいくつかのパターンがあり、タマゴ2個のパターンはタマゴの摂取なしより食事の質が優れていた(P<0.001)。殆んどのタマゴ摂取パターンでHEI値は同等であったが、タマゴ2個のパターンでは低かった。タマゴの摂取は非摂取と比較して、総タンパク質食品、海産物および植物性タンパク質、野菜、果物、穀類および乳製品の摂取が多く、精製穀類や添加された砂糖の摂取が少なく、食事の質の改善に寄与したが、一つの食品が健康的な食事パターンに寄与するのではなかった。タマゴの摂取で、食物繊維、カルシウム、マグネシウム、カリウム、コリン、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンDおよびビタミンEの摂取量が有意に高かった。そして、カルシウム、鉄、マグネシウム、カリウム、コリン、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEの推定平均必要量(EAR)または摂取推奨量(AI)を下回る人の割合が有意に少なかった。
同様に、カリウムとコリンの摂取量が推奨量以上の割合はタマゴ摂取者で非摂取者より多かった。卵摂取者では、コリンの摂取AIは34.4%であるのに対し、非摂取者は4.3%であった。
以上の結果から、タマゴおよびタマゴを含む食品は他の食品とバランスよく摂取することで、健康的な食事パターンの重要な構成成分となることが示された。
文献No.182
卵と飽和脂肪酸を含む朝食は、健康な成人の血糖値に急激な変化を起こさない:無作為化部分
クロスオーバー試験
CS. Dhanasekara et al., Egg and saturated fat containing breakfasts have no acute effect on acute glycemic control in healthy adults: a randomized partial crossover trial. Nutr Diabetes, 2021, 11(1), 34.
【要旨】
卵の摂取量が多いと血糖制御能の不全を来すと見なされている。タマゴの消費が広がっていることから、この相関の原因を明らかにすることが必要である。本研究では、卵の摂取が同時に摂取する飽和脂肪酸の有無に関わらず、血糖値を急激に変化させるかどうかを検証した。
被験者48名(米国人男性46%、25.8±7.7歳、BMI 25.7±4.6 kg/m2、卵1個以上/週)を対象に、無作為化部分クロスオーバー単回摂取試験を実施した。朝食の主な成分に基づいて次の4被検食、すなわち卵群(EB)、飽和脂肪酸群(SB)、卵卵と飽和脂肪酸群(ES)および対照食群(穀類ベースの朝食、CB)について、各被験者は7日間の間隔をおいて2種の試験食を朝食として摂取した。試験は7日間の間隔をおいて2度行われ、6回の採血(朝食前、朝食後30分、60分、90分、120分および180分)を行い、血糖値とインスリンの濃度を測定した。
その結果、EB、SBおよびESのいずれの食事を摂取しても、対照食群であるCBと比較して、グルコースやインスリンのAUC(血中濃度-時間曲線下面積)に有意な差は認められなかった(P >0.05)。
健康な成人においては、飽和脂肪酸の有無にかかわらず、卵を含む朝食を短期間摂取しても血糖値に悪影響は認められなかった。本研究は、卵の継続的な摂取が安全であることを示唆するデータであり、今後、飽和脂肪の有無での卵の長期摂取についての評価が望まれる。
文献No.181
中国人成人における卵の摂取と認知機能の関連:長期的効果と鉄の摂取による影響
Layan Sukik et al., Association between egg consumption and cognitive function among Chinese adults: long term effect and interaction effect of iron intake. Br J Nutr. 2021 Nov 5:1-26. doi: 10.1017/S0007114521004402
【要旨】
卵の摂取と認知機能との関連に関しては様々な議論がある。本研究では、中国人成人における卵の摂取と認知機能の関連を評価することを目的とした。また、鉄の摂取との関連性についても評価した。
本研究は、1991年から2006年までの「中国健康栄養調査(CHNS)」のデータを適用し、中国13省(都市部・農村部の両方を含む)に住む55歳以上の男女4,852名(男性2,309名、女性2,543名)を対象とした。認知機能の評価*1は、1997年、2000年、2004年および2006年に実施した。卵と鉄の摂取量は、連続する3日間について24時間思い出し法により調査した。解析は多変量混合線形回帰とロジスティック回帰を用いて行った。
卵の摂取は包括的な認知機能と正の相関を示した。十分に調整されたモデル(モデル5)*2では、卵の摂取量の四分位別の認知機能の回帰係数(95%CI)は、それぞれ0、0.11(-0.28-0.51)、0.79(0.36-1.22)および0.92(0.43-1.41)であった。記憶力の評価では、卵の摂取量が少ない人と比較して、多い人では「記憶力が悪い」および「記憶力が衰えた」と答えた人の割合が低かった(オッズ比[95%CI]:0.93[0.74-1.19]および0.84[0.69-1.02])。また、鉄の摂取と卵の摂取との間には有意な相関があり(P = 0.011)、卵の摂取と認知機能との相関は、鉄の摂取量が少ない人で多い人よりも強かった。また、性別も卵の摂取と認知機能の関連に対し影響を与えており、女性でその関連性が認められたが(P=0.025)、男性には認められなかった。
以上より、中国人成人において、卵の摂取と認知機能に正の関係にあることがわかった。また、卵の摂取と鉄の摂取との間には有意な相互作用があり、鉄の摂取が少ない人において、卵の摂取が認知機能の向上と関連することがわかった。
*1 認知機能の評価:2つの指標で評価した。①認知機能:客観的な評価。全体的な認知機能を「Telephone Interview for Cognitive Status-Modified」で評価した。/②記憶力:主観的な評価。「記憶力はどうか」、「過去12か月間で記憶力はどう変化したか」に対し、自己申告で回答。
*2 完全に調整されたモデル(モデル5):年齢、性別、エネルギー摂取量、脂肪の摂取量、喫煙、飲酒、収入、都市性、教育、身体活動、食事パターン、BMI、血圧、認知機能テストに1回しか参加していない人を除外。
文献No.177
高齢者の死亡率とアポリポタンパク質Eの遺伝子型並びに肉、魚、卵の摂取量との関連:中国における
縦断研究
X Jin, et al., Apolipoprotein E Genotype, Meat, Fish, and Egg Intake in Relation to Mortality Among Older Adults A Longitudinal Analysis in China. Front Med (Lausanne). 2021 20, 8:697389.
【要旨】
アポリポタンパク質E(APOE)の遺伝子型は食事パターンと有意に関連することが報告されており、動物性タンパク質食品の健康への影響に対してAPOE遺伝子型が関連する可能性が考えられる。本研究では、APOE遺伝子型と肉、魚および卵の摂取が死亡率に及ぼす影響の交互作用を検討することを目的とした。
人口ベースのコホート研究である中国での縦断健康長寿研究(CLHLS:Chinese Longitudinal Healthy Longevity Study)からの8,506人の高齢者(平均81.7歳、女性52.3%)を対象とした。ベースライン時に肉、魚、卵の摂取頻度を3点式の質問で評価し、平均5.46年の追跡調査を行った。Cox回帰法を用いて肉、魚、卵の摂取頻度による総死亡のハザード比を算出し、APOE遺伝子型と性別で層別解析を行った。
多変量調整モデルにおいて、肉および魚の摂取量は全死因死亡率と関連した(高摂取vs.低摂取, 肉:HR=1.14, 95%CI:1.01-1.28、魚: HR=0.83, 95%CI:0.73-0.95)。APOE遺伝子型は、肉および魚の摂取量と有意な相互作用を示した(Ps <0.05)。また、魚類の高摂取はAPOEε4保有者でのみ死亡リスクの低下と関連していた(HR=0.74, 95%CI:0.56-0.98)。肉類の高摂取は、APOEε4非保有者でのみ、死亡リスクの上昇と有意に関連していた(HR= 1.13, 95% CI: 1.04-1.25)。この相互作用は男性でのみ認められた。卵摂取量と死亡率との間にはε4保因者、非保因者共に有意な関連は認められなかったが、層別解析では女性のAPOEε4非保有者のみ卵の摂取が低い死亡率と関連した(HR=0.87, 95%CI:0.77-0.97)。
中国の高齢者において、卵、肉および魚の摂取量と死亡率との関連はAPOEε4保有の有無および性別によって異なることが示された。さらなる研究が必要だが、遺伝子に基づいた個別の食生活の推奨が期待できる。
※アポリポタンパク質E:リポ蛋白の主要構成成分で脂質代謝において重要な役割を果たす。APOE遺伝子型にはAPOE2(ε2)、APOE3(ε3)、APOE4(ε4)の3種類がある。
文献No.174
特殊児童の発育阻害に関連した食品群摂取量
Seyyed Mostafa Nachvak et al., Food groups intake in relation to stunting among exceptional children. BMC Pediatrics. 2020 Aug 20;20(1):394
【要旨】
公衆衛生上の問題のひとつである発育阻害には、環境要因の中でも特に食事が大きな影響を及ぼしている。これまでに様々な食品群の摂取と発育阻害との関連が調べられてきたが、特殊児童を扱った研究は行われない。本研究では、イランの特殊児童の食品群摂取と発育阻害との関連を横断的に評価した。
5~15歳の470人の特殊児童(精神遅滞児226人、聴覚障害児182人、視覚障害児62人)を対象に食習慣アンケート調査を実施して食事摂取量を調べた。また身長を測定し、年齢に対する身長のZスコアが-1未満の児童を発育阻害と定義した。年齢、性別、その他の食事要因を共変量として調整し、食事摂取量と発育阻害の関連性を評価した。
児童の平均年齢は10.02±2.04歳で、50.6%の児童が発育阻害児であった。卵を適度に摂取するグループ(1〜3回/週)は、少ないグループ(1回/週未満)と比較して発育阻害の発生率が64%低かった(オッズ比OR:0.36、95%CI:0.21-0.64)。このような所見は、精神遅滞児に限定しても見られ、発育阻害の発生率は62%低かった(OR:0.38、95%CI:0.16-0.89)。さらに、乳製品の摂取量が多いグループ(>2回/日)は少ないグループ(1~2回/日)と比較して、発育阻害の発生率が50%低かった(OR:0.50、95%CI:0.29-0.87)。肉、果物、野菜などの他の食品群の摂取と発育阻害発生率との間には有意な関係は見られなかった。
以上のことから、卵や乳製品の摂取が多いと、発育阻害の発生リスクが軽減する可能性が示唆されたが、肉、果物および野菜の摂取とは有意な関係は認められなかった。
文献No.164
アメリカ人のための食事ガイドラインで示されるたんぱく質食品オンス相当量の代謝同等性の評価:ランダム化比較試験
S Park et al., Metabolic Evaluation of the Dietary Guidelines' Ounce Equivalents of Protein Food Sources in Young Adults: A Randomized Controlled Trial. J Nutr. 2021, 15, 11190-1196.
【要旨】
アメリカ人のための食事ガイドライン(DGA)では、消費者が様々な食品からたんぱく質の必要量を満たせるように「オンス相当量」が提示されている。しかしたんぱく質源となる食品について代謝的な同等性は立証されていない。オンス相当量のたんぱく質食品を摂取した場合の同化反応が必須アミノ酸含有量にそのまま関連するのかを検証するために介入試験を行った。
健康な若者(12~18歳)56名を対象とし、3日間の食事制限の後に安定同位体トレーサー法を用いて8.5時間の代謝試験を行った。7種類のたんぱく質食品(牛肉、豚肉、卵、豆腐、インゲン豆、ピーナツバター、ミックスナッツ)のいずれかを摂取した後に、たんぱく質の合成および分解についてベースラインからの変化量を比較した。
動物性たんぱく質(牛肉、豚肉および卵)を摂取した場合、植物性たんぱく質(豆腐、インゲン豆、ピーナツバターおよびミックスナッツ)の摂取よりもベースラインからの全身での正味たんぱく質バランスの増加が大きかった(P <0.01)。この改善は、すべての動物性たんぱく質においてたんぱく質合成が増加したことによるものであったが(P <0.05)、卵と豚肉では植物性たんぱく質に比べてたんぱく質分解も抑制された(P <0.001)。また、全身での同化反応の程度は食品中の必須アミノ酸含有量と相関していた(P <0.001)。
この結果より、健康な若者ではDGAで示されているたんぱく質食品の「オンス相当量」は代謝的に同等ではないことが明らかになった。健康的な食事パターンを確立するに当たっては、食品中のたんぱく質の同化反応の重要性も考慮する必要がある。
文献No.163
朝食での卵消費量が増加すると、通常の栄養素摂取量の増加をもたらす:NHANESとUSDA CACFP School Breakfast Guidelinesを用いたモデル分析
Papanikolaou, Y.; Fulgoni, V.L., III Increasing Egg Consumption at Breakfast Is Associated with Increased Usual Nutrient Intakes: A Modeling Analysis Using NHANES and the USDA Child and Adult Care Food Program School Breakfast Guidelines. Nutrients 2021, 13, 1379.
【要旨】
子供にとっての朝食摂取の重要性や卵の利点はよく知られているが、子供の朝食に卵を加えることの効果を調べたデータは限られている。
本研究では、日常的な朝食パターンおよびChild and Adult Care Food Program(CACFP)に準拠した学校朝食に卵を加えた場合の栄養素摂取量をモデル化した。分析には,2011年-2016年のNational Health and Nutrition Examination Survey(NHANES)の食事データを用いた。NHANESの対象者は1~18歳の子供9254名、CACFPへの参加者は159名。
通常の朝食に卵1個を追加することで、ベースライン値と比較して、総コリン、ルテインゼアキサンチン、ドコサヘキサエン酸の摂取量は20%以上増加し、パントテン酸、リボフラビン、セレン、ビタミンDの摂取量が10%以上増加した。また卵2個の追加により、朝食時のタンパク質とビタミンAの摂取量はベースライン値と比較して10%以上増加した。CACFPの学校朝食に卵を2個追加した場合の結果も同様であった。総コリンを充分に摂取できている子どもの割合は、ベースライン値の22.6%に比べて、卵1個の追加で43.6%、2個の追加で57.8%に増加した。
これらの結果から、子供の朝食に卵を追加すれば、栄養素摂取量を増加でき、かつ、摂取量が不十分な栄養素や問題となる摂取増加を目指す公衆衛生の主導に役立つことができる。
文献No.160
妊娠第3期(後期)に母親がコリンを摂取すると乳児の情報処理速度が向上する:無作為化二重盲検介入試験
Caudill MA et al., Maternal choline supplementation during the third trimester of pregnancy improves infant information processing speed: a randomized, double‐blind, controlled feeding study. The FASEB JOURNAL. 2018, 32(4), 2172–2180.
【要旨】
動物試験では、妊娠中に母親の食事にコリンを補給すると、生涯にわたり子の認知機能が向上することが示されているが、母親のコリン摂取の認知機能への影響を調べたヒトでの研究では、被験者の被験食品摂取状況や、コリンや他の栄養素の摂取量のコントロールが不十分なため、一貫した結果が得られていない。本研究では、被験者の食事管理を厳密に行い、コリンやその他の栄養素の摂取量をコントロールした上で,妊娠中の母親のコリン摂取が乳児の認知機能に及ぼす影響を検討した。
妊娠第3期(後期)に入った女性を、米国で定められたコリンの1日の摂取目標量である480 mg/日(n=13)またはその約2倍量にあたる930 mg/日(n=13)のいずれかを摂取するように無作為に割り付け、出産日まで毎日摂取させた。生まれた子(n=24)を対象に、情報処理速度および視空間記憶について生後4,7,10および13か月の時点で実施した。その結果、いずれの評価時点においても反応時間の平均値は930 mg/日の群の母親から生まれた子の方が480 mg/日の群と比較して有意に速かった(P = 0.03)。さらに、480 mg/日の群では、母親のコリン摂取期間が長い子* ほど反応速度が速いことが認められた。以上の結果より、妊娠中の母親にコリンを摂取させることで、子に認知機能の向上がもたらされる可能性が示唆された。
*母親のコリン摂取期間:
コリン摂取期間は「妊娠第3期に入ってから出産するまで」なので、被験者によって摂取日数が異なっている。各群の平均妊娠期間は、480㎎/日群は40.2±0.87週、930㎎/日群は39.9±0.42週であった。
文献No.159
1日1個の卵摂取による乳幼児の発育に関する介入試験
Prado EL et al., Early Child Development Outcomes of a Randomized Trial Providing 1 Egg Per Day to Children Age 6 to 15 Months in Malawi. J. Nutr., 2020, 150(7):1933-1942.
【要旨】
卵には、コリン、リボフラビン、ビタミンB6やB12、葉酸、亜鉛、タンパク質、DHAなど、脳の発達に重要な栄養素が豊富に含まれている。1日1個の卵を6ヶ月間にわたり摂取することが乳幼児の発達に及ぼす影響を評価した。マラウイ共和国のマンゴチ地区の農村部で実施された無作為化比較試験で、生後6~9カ月の乳幼児660名を介入群と対照群に無作為に割り付け、6か月間にわたり介入群の家庭では、家庭訪問時に卵を提供した。対照群は同じ頻度で家庭訪問を行うが、卵の提供は行わなかった。
試験終了後、介入群と対照群では、どの発達スコアにおいても有意な差は認められなかった。しかし、運動能力の発達が遅れている子供の割合は、対照群(16.5%)と比較して、介入群(10.6%)で少なかった(発症比:0.59、95%CI:0.38-0.91)。
主要な発達アウトカムに対して事前に指定された10の効果修飾因子のうち、7例の有意な相互作用が見つかり、世帯収入や母親の教育水準が高いといった家庭環境が整っている子供ほど介入の効果が高いという一貫したパターンが示された。
以上の結果より、1日1個の卵の提供は、この集団全体の小児の発達には影響を及ぼさなかったが、家庭環境が整っている子供では発達面で何らかの効果が見られる可能性が示唆された。
文献No.158
現代のアメリカ人の食事パターンへの卵の排除と追加のモデル化:小児期のコリンおよびルテイン+
ゼアンキサンチンの通常の摂取量との関連性
Papanikolaou Y et al. Modeling the Removal and Addition of Eggs in the Current US Diet is Linked to Choline and Lutein + Zeaxanthin Usual Intakes in Childhood. Curr Dev Nutr. 2020, 5(1).
【要旨】
小児期における卵摂取量の増減の栄養的影響を調べた成績は限られ、さらにコリンやルテイン+ゼアンキサンチンについての通常摂取量のデータもない。本研究は、アメリカ人についての国民健康栄養調査NHANES 2011-2014のデータを基に、6~23ヵ月齢の乳幼児 n = 130および2~18歳の小児/青年n = 980を対象に、幼少期の食事パターンに卵を追加または除去したときのコリンおよびルテイン+ゼアキサンチンの摂取量を分析した。
幼少期の食事パターンから卵を除くと、すべての年齢グループでコリンの摂取量が減少し、コリンの摂取目安量(AI)※1を満たす数が有意に減少した。一方、週1個の卵を追加すると、乳幼児ではコリンのAIを満たす者が約10%増加した。さらに週7個の卵を追加すると、乳幼児の98%がコリンのAIを満たし、2-8歳の小児でも約94%がAIを満たした。また1個/日の卵の追加によって、コリンのAIを満たした人数の割合は9歳以上の小児では4.4%から23.0%に増加し、2歳以上の小児では22.1%から52.4%に増加した。そして1個/日の卵の追加によって、2-8歳および2-18歳の小児でルテイン+ゼアンキサンチンの1日当たりの摂取量が約75 mcgから775 mcg、並びに916 mcg/から931 mcgへと有意に増加した。
この研究の結果は、健康的な食生活の一環としてアメリカの小児期の食事パターンに卵を取り入れることで、コリンの推奨摂取量が満たされ、ルテイン+ゼアンキサンチンの摂取量をも増加させることを支持している。
※コリン摂取目安量は次の通り。
生後6ヶ月:125 mg/日、7~12ヶ月:150 mg/日、1~3歳:200 mg/日、4~8歳:250 mg/日、9~13歳:375 mg/日、14~18歳男性:550 mg/日、14~18歳女性:400 mg/日、14~18歳で妊娠中の女性:450 mg/日、14~18歳で授乳中の女性:550 mg/日。
United States Department of Health and Human Services and United States Department of Agriculture. Dietary guidelines for Americans 2015–2020.
https://health.gov/dietaryguidelines/2015/resources/2015-2020_Dietary_Guidelines.pdf
文献No.155
調理および胃腸消化が卵の生理活性物質の吸収性に及ぼす効果
E Nolasco et al., Evaluating the effect of cooking and gastrointestinal digestion in modulating the bio-accessibility of different bioactive compounds of eggs. Food Chem. 2021, 344, 128623.
【要旨】
鶏卵の栄養価は鶏の飼料に生理活性物質を添加することによって強化されるが、強化された成分のバイオアクセシビリティ(生体利用性)に影響する要因は特定されていない。本研究では、消化管(GI)消化後の卵成分のバイオアクセシビリティに及ぼす鶏種、飼料の強化および調理法の影響を検討した。ホワイトレグホン(WLH)およびロードアイランドレッド(RIR)にアマニ油、カロテノイドを強化したトウモロコシ、大豆ベースの飼料を与え、採卵し、目玉焼きまたはゆで卵に調理し、消化管モデルを用いてバイオアクセシビリティを評価した。
その結果、どの卵タンパク質の加水分解の程度は鶏種や餌および調理法の影響を受けず、すべて同等に消化された。調理した強化卵中のα-リノレン酸バイオアクセシビリティはGI消化後も維持されていた。強化卵中のルテインのバイオアクセシビリティは、RIRの目玉焼き以外ではGI消化後に低下した。WLHおよびRIR由来の卵とも、GI消化後もペプチド含量は同等であった。これらの結果から、調理卵でのバイオアクセシビリティは生理活性成分によって異なるが、卵の潜在的な機能性食品として使えることが明らかにされた。
文献No.154
卵を含む乳児期の食事と乳児の成長(エクアドルでの無作為化対照試験)
Lora et al., Eggs in Early Complementary Feeding and Child Growth: A Randomized Controlled Trial. Pediatrics. 2017, 140(1) doi: https://doi.org/10.1542/peds.2016-3459.
【要旨】
卵は成長と発達に関わる栄養素の良い供給源である。本研究では、乳児期の食事に卵を取り入れることで、乳児の栄養状態が向上するかどうかを調査した。
エクアドルの乳児(6~9ヶ月)を介入群(1日1個の卵、n=83)と対照群(介入なし、n=80)に分け、6か月間の無作為化比較試験を実施した。週に1度、被験者を訪問して健康状態(発熱・下痢の有無、呼吸器・皮膚・歯の状態)の調査を行い、介入群では同時に卵の配布と摂取量の調査も行った。また試験開始時および終了時には、体格、食事摂取頻度を調査した。測定した値はZスコアに変換して(年齢を問わずに値を比較できるように標準化して)解析を行った。
介入群では対照群と比較して、卵の食事摂取量が高くなっており(摂取比率1.57, 95%CI 1.28-1.92)、母親あるいは擁護者による乳児の卵に対するアレルギー反応についての報告はなかった。卵の介入によって、年齢に対する身長のZスコアが0.63(95%CI 0.38-0.88)、年齢に対する体重のZスコアが0.61(95%CI 0.45-0.77)有意に増加した。また介入群では、発育阻害に関わる有病率が47%(有病比率0.53, 95%CI 0.37-0.77)、低体重に関わる有病率が74%(有病比率0.26, 95%CI, 0.10-0.70)それぞれ有意に減少した。
これらの結果から、早期からの卵の摂取はエクアドルの乳幼児の成長を有意に改善するといえる。体力的に脆弱な乳幼児にも受け入れられることから、卵は世界的に見てもリスク低減に寄与すると見なされる。
文献No.151
過体重および肥満成人の朝食での卵摂取によるエネルギー摂取量と満腹感への影響-クロスオーバー試験
J B Keogh et al., Energy Intake and Satiety Responses of Eggs for Breakfast in Overweight and Obese Adults—A Crossover Study. Int J Environ Res Public Health 2020, 17, 5583.
【要旨】
朝食の内容により次の食事での摂取量が決まる可能性があり、減量中の過体重者や肥満者の食事指導において活用できると考えられる。本研究では、オーストラリアの過体重の成人男女を対象に、卵を含む朝食を摂取した場合のエネルギー摂取量およびVAS(visual analogue scale、主観的な判断スケール)法による空腹感を調査することを目的としてクロスオーバー試験を実施した。被験者は18歳以上でBMI25 kg/m2を超える過体重者または肥満者50名(44±21歳、体重86±14kg、BMI31±4kg/m2)で、1週間の期間を空けて2日間の研究を実施した。それぞれの日に朝食として卵食(卵とトースト)、またはシリアル食(牛乳、オレンジジュース、シリアル)の2種類のエネルギー量が等しい朝食(1800 kJ)を摂取させた。
調査の結果、朝食に卵食を摂取した場合、4時間後の自由な昼食におけるエネルギー摂取量は、シリアル食と比較して有意に少なかった(4,518 vs. 5,283 kJ, P=0.001)。エネルギー摂取量にはBMIおよび性別の影響はなかった。また、卵食では朝食後の空腹感が有意に低く(食事と時間の交互作用、P=0.028)、シリアル食の摂取後ではより早く空腹感が戻った。これらの結果について性別や年齢による影響はなかった。
以上より、過体重者および肥満者では卵を含む朝食を食べた場合、シリアル食と比較して昼食でのエネルギー摂取量が減少することが示された。このように過体重および肥満者の食事管理に役立つ食品を特定することは、減量中の食事計画を立てる上で重要であり、卵もその一つとして活用できると考えられる。
文献No.147
コロンビアの子供の赤身肉および卵の摂取頻度と血清フェリチン濃度との関係
Oscar F et al., Red meat and egg intake and serum ferritin concentrations in Colombian
children: results of a population survey, ENSIN-2015. J Nutr Sci. 2020, 9: e12. doi: 10.1017/jns.2020.5
【要旨】
コロンビアでは小児の貧血が健康課題となっておりその原因として鉄欠乏が考えられている。赤身肉や卵はコロンビアの伝統的な食事パターンの一部で、ヘム鉄の摂取源である。そこで本研究では、赤身肉と卵の摂取頻度、血清フェリチン濃度、さらに血清フェリチンと赤身肉および卵摂取の関係を調べることを目的とした。2014-2018年にコロンビアで行われたENSIN-2015(Encuesta Nacional de la Situación Nutricional en Colombia-2015)の横断データに基づき、5~17歳の小児13,243人を対象とした調査を実施した。食物摂取頻度調査の結果から赤身肉および卵の摂取頻度を求め、血清フェリチン濃度との関連性を多重線形回帰分析により評価した。赤身肉の習慣的な摂取頻度は0.49(95%CI:0.47-0.51)回/日、卵の摂取頻度は0.76(95%CI:0.74-0.78)回/日であった。男児の平均血清フェリチン濃度(μg/L)は41.9(95%CI:40.6-43.1)、女児は35.7(95%CI:34.3-37.7)で、男女間で有意に差があった(P<0.0001)。また、赤身肉および卵の摂取頻度と血清フェリチン濃度の関連について偏回帰係数(β)を求めた結果、赤身肉で3.0(95%CI:1.2-4.7)、卵で2.5(95%CI:1.0-3.9)であった。
以上の結果から、赤身肉と卵の摂取はコロンビアの小児の血清フェリチン濃度の決定要因であり、貧血や鉄欠乏を減らすための公共政策の選択肢になると考えられた。
文献No.145
現代のタマゴの消費パターンの評価:イギリスの全国食事栄養調査 (National Diet and Nutrition Survey; NDNS)における食事の質、栄養、健康状態との関連性
Gibson S et al., Evaluating current egg consumption patterns: Associations with diet quality, nutrition and health status in the UK National Diet and Nutrition Survey. Nutrition Bulletin. 2020. doi: 10.1111/nbu.12462
【要旨】
イギリスでは、ここ10年間タマゴの消費量が増加している。卵摂取者と非摂取者の現時点の食習慣と栄養、健康との関係を明らかにするため、イギリスの全国食事栄養調査(NDNS)に参加している647名の食事記録を分析した。
まず、調査対象者の卵と卵料理の平均消費量は29 g/日(3.5個/週)であった。男女別に解析した結果、卵を食べる女性(n = 224、平均46g/日、卵5個/週)は、食べない女性(n = 150)より果物、野菜、魚を多く摂取しており、タンパク質、一価不飽和脂肪酸、n-3多価不飽和脂肪酸、ビタミンD、ビタミンB群、ビタミンC、鉄、亜鉛、セレンの摂取量が有意に高かった。血漿中の25-ヒドロキシビタミンD、カロテノイド、セレン、フェリチン、ヘモグロビンの濃度も有意に高かった。また卵を食べる女性では、食べない女性よりも平均エネルギー摂取量が多いにも関わらず、BMIの平均値および腹囲の値が低かった。一方で、卵を食べる男性(n = 159、平均54 g/日、卵6個/週)は、ビタミンD、ビオチン、ヨウ素、セレンの摂取量が有意に高かったが、血漿中の栄養素濃度と体重は食べない男性(n = 114)と同程度であった。卵摂取と心疾患リスクとの間には有意な関連性は男女共に見られなかった。
以上の結果より、本研究での調査対象の女性では、卵の消費は食事の質の向上、栄養状態の改善、およびBMIの軽度の低下と関連していることが示された。
文献No.139
卵は米国人の不足栄養素の供給源として費用対効果が大きい(コスト分析)
Papanikolaou Y et al., Eggs Are Cost-Efficient in Delivering Several Shortfall Nutrients in the American Diet: A Cost-Analysis in Children and Adults. Nutrients. 2020, 11;12(8):2406.
【要旨】
栄養成分摂取量と卵の価格との関連を調査した論文。栄養成分摂取量は、2013年~2016年の米国国民健康栄養調査のうち子供2~18歳(n= 956)および大人19歳以上(n= 2424)のデータを使用した。物価の影響を考慮した食品および栄養素の価格は、農務省栄養政策推進局(CNPP)の食品価格データベースから求めた。これらのデータから、米国で食べられている各食品群の価格と栄養成分について、全卵と比較した。食品100gあたりの価格は、乳製品0.23USD、穀類0.27USD、全卵0.35USDで、飲料を除く15の主要な食品グループの中で全卵は3番目に低かった。卵については、タンパク質1gあたり0.03USDであり、タンパク質の供給源として費用対効果が高い食品であった。食事中の全タンパク質のうち卵は子供で2.7%、大人では3.7%を占めた。また、ビタミンA は1RAE mcgあたり0.003 USDであり、全ビタミンAのうち子供で3.8%、大人で6.0%を占めた。子供では、食事中の全コリンのうち12%を卵から摂取しており、コリン1mgあたり0.002 USDであった。大人においても同様に全コリンの15%を卵から摂取していた。ビタミンDは子供で5%、大人で9.5%を卵から摂取しており、1mcgあたり 0.21 USD、0.22 USDであった。
以上より、卵は米国人のたんぱく質および不足栄養素(コリン、ビタミンAおよびビタミンD)を補う経済的な食品として推奨できる。
文献No.132
マラウイ農村部の乳児の成長に及ぼす卵の影響(介入試験)
CP Stewart et al., The effect of eggs on early child growth in rural Malawi: the Mazira Project randomized controlled trial. Am. J. Clin. Nutr., 2019,110:1026–1033.
【要旨】
発育不全は、多くの低所得国において重要な公衆衛生問題となっている。本研究では、1日1個の卵の摂取が、アフリカ東南部の国マラウイ共和国の農村部の子供の成長に及ぼす影響を評価した。2018年2月から7月の間、生後6~9ヵ月の660人の乳児を対象に、卵を6ヵ月毎日1個ずつ摂取するグループ(介入群)とそうでないグループ(対照群)とに分けて個別ランダム化比較試験を行った。担当者は週に2回家庭を訪問し、調査開始時、3ヵ月および6ヵ月後に、身長、体重、頭囲、上腕の太さの測定および規則順守の確認のために、24時間思い出し法による食事調査を行った。
本研究の対象者は、594人(介入群330名、対照群329名)であったが、10%が脱落した。介入群では卵の摂取率は調査開始時に4.2%だったのに対し、3ヵ月後、6ヵ月後にはそれぞれ84.9%、71.0%に増加した。一方、対照群では調査開始時、3ヵ月後、6ヵ月後の卵の摂取率はそれぞれ4.0%、6.5%、7.2%であった。調査開始時の年齢に対する低身長の割合は14%、年齢に対する体重不足は8%、痩せは1%であり、グループ間での差は見られなかった。年齢に対する身長および体重、身長に対する体重において、介入効果は認められなかったが、年齢に対する頭囲のZ scoreは介入群で有意に高かった(平均差0.18, 95% CI: 0.01, 0.34)。また、教育歴の高い母親の子供では、介入群で身長が有意に増加した(P = 0.027)。
この研究の結果では、卵を毎日1個摂取させても成長に対する全般的な効果は認められなかった。その原因は、動物性食品を多く摂取し「痩せ」の者の割合が低かったことが考えられる。しかし、離乳期から2歳までの子どもの食事の質を高めることは、子供の発育不全のリスクを低くする重要な対策とされており、今後もさらなる調査が必要である。
文献No.104
乳幼児の卵摂取は発育に不可欠な栄養素と身長に関連する(横断研究)
Yanni Papanikolaou et al., Egg Consumption in Infants Is Associated with Longer Recumbent Length and Greater Intake of Several Nutrients Essential in Growth and Development. Nutrients 2018, 10, 719; doi:10.3390/nu10060719
【要旨】
乳児期の栄養素の摂取は、健全な成長と発達にとって非常に重要である。本研究では、卵摂取と栄養摂取との関連性、成長マーカーおよび体重関連指標について、米国の生後6?24ヵ月齢の卵を摂取する乳幼児(N = 561)と同年齢の卵非摂取者(N = 2129)とで比較した。卵摂取群と非摂取群は24時間食事思い出し法により分類した。
その結果、卵摂取群は、非摂取群と比べエネルギー摂取量の増加が見られた(1265±2 vs. 1190±14kcal /day; P = 0.01)。加えて、卵摂取群は、タンパク質(48±0.7 vs. 41±0.4g /day)、総コリン(281±6 vs. 163±2mg /day)、ルテイン+ゼアキサンチン(788±64 vs. 533±23)、ドコサヘキサエン酸(DHA)(0.04±0.02 vs. 0.02±0.001g /day)、ビタミンB12(4.2±0.1 vs. 3.7±0.1 mcg/day)、α-リノレン酸(0.87±0.02 vs. 0.82±0.01g /day)、リン(977±15 vs. 903±8mg /day)、およびセレン(67±1 vs. 52±0.6mcg /day)、総脂肪(50±0.7 vs. 45±0.3g /day)、一価不飽和脂肪(17±0.3 vs. 15±0.1g /day)、飽和脂肪(20±0.4 vs. 18±0.2 g /day)、並びにナトリウム(1663±36 vs. 1418±19mg /day)の摂取量がすべて有意に増加していた; (P<0.05)。
一方で添加糖 (4.7±0.3 vs. 6.1±0.2 tsp eqテーブルスプーン等量/day)および全糖(87±2 vs. 99±1 g /day)が有意に増加したが(P<0.05)、葉酸、鉄、マグネシウムおよびナイアシンの摂取量が減少していた。また、卵摂取群では身長の高さとの関連が見られた。(79.2 ± 0.2 vs. 78.7 ± 0.1 cm; P = 0.03)。
結論として、6-24ヶ月齢の乳児の卵摂取は、タンパク質、ルテイン+ゼアキサンチン、コリン、ビタミンB12、セレンおよびリンを含むいくつかの栄養素摂取量増加をもたらし、また身長の高さと関連するなど乳児の発育にとってメリットがある。一方で、卵摂取群はいくつかの必須栄養素の量が少ないため、それらの栄養素の多い他の食品を組み合わせて、不足する栄養素の摂取を増加させる教育戦略が必要である。
文献No.102
卵のコリンは生物学的利用率が高い(介入研究)
Lemos BS et al., Effects of Egg Consumption and Choline Supplementation on Plasma Choline and Trimethylamine-N-Oxide in a Young Population. J Am Coll Nutr. 2018:1-8. doi: 10.1080/07315724.2018.1466213.
【要旨】
血中トリメチルアミンオキサイド(TMAO)濃度は心血管疾患リスクと関連がある。卵はコリンの主要な供給源であるため、コリンサプリメントと比較して卵の摂取が血液中のコリンとTMAO濃度に及ぼす影響を検証する試験を実施した。健常な男女30名(25.6±2.3歳、BMI 24.3±2.9kg/m2)を対象として、13週間のクロスオーバー介入試験を行った。2週間のウォッシュアウト後、卵3個/日または重酒石酸コリンサプリメント(両群ともコリン量は約400mg)を4週間ずつ摂取させた。3週間のウォッシュアウト後、被験食を入れ替えて4週間摂取した。食事記録、TMAOおよびコリンの血中濃度は各介入の終了時に測定した。
卵3個/日の摂取では、コリンサプリメント摂取と比較して、総脂質、コレスロール、セレン、ビタミンEの摂取量が有意に上昇した(P<0.05)。一方、炭水化物摂取量は有意に低下した。空腹時血中コリン濃度は、コリン補給で明らかな変化が無かったのに対し、卵摂取により20%増加した(P=0.023)。血中TMAO濃度には介入により開始時と有意な変化はなかった。
以上の結果から、コリンの生物学的利用効率はサプリメントとして摂取するよりも卵からの摂取で高いが、どちらも血中TMAO濃度には影響を及ぼさないことが示された。つまり、必須栄養素であるコリンの摂取源として、卵は安全に取り入れることができることが示された。
(No.98と同じ研究)
文献No.100
卵白は加熱温度によって消化率および消化産物が異なる(in vitro)
Wang X et al., Effect of Different Heat Treatments on In Vitro Digestion of Egg White Proteins and Identification of Bioactive Peptides in Digested Products, J Food Sci. 2018, 25. doi: 10.1111/1750-3841.14107.
【要旨】
鶏卵は様々な加工を経て摂取されるが、種々の加熱処理条件で栄養素の変化に及ぼす影響を調べた研究は少ない。本研究では異なる温度(4,56,65,100℃)の加熱が、卵白タンパク質の消化率や消化産物に与える影響について、ペプシンおよびペプシン+パンクレアチンを用いたin vitro試験で検討した。ペプシン消化率は65℃で処理した卵白タンパク質が最も高く、ペプシン+パンクレアチンによる消化率は調理温度を上げると有意に増加した(P<0.05)。Nano-LC-ESI MS/MSを用いて消化産物の分子量を測定した結果、ペプシン処理の場合と比較してペプシン+パンクレアチン処理では低分子ペプチドが多く確認され、パンクレアチンにより低分子ペプチドが増えることが分かった。全消化産物において同定された特異的なペプチドの数とin vitroでの消化率との間に有意な正の相関がみられた。さらに、抗酸化、抗菌、抗高血圧などの機能を持つ生理活性ペプチドは4℃および100℃のサンプルで特に多く検出された。
以上より、卵白は加熱温度によって消化率および生成されるペプチドの種類に違いがあることから、様々な消費者の要望に応えることができると考えられる。食品産業における卵の活用および卵消費の理論的な根拠となる研究である。
文献No.95
朝食での卵摂取は栄養状態や食習慣の改善に役立つ(介入研究)
Taguchi C et al., Regular egg consumption at breakfast by Japanese woman university students improves daily nutrient intakes: open-labeled observations. Asia Pac J Clin Nutr. 2018, 27(2):359-365.
【要旨】
卵は様々な栄養素や抗酸化物質を含む良質なたんぱく源である。毎日1個の卵を追加摂取することで日々の栄養素摂取状況や血中抗酸化レベルにどのような影響があるかを調べるため、日本人女子大生を対象とした介入試験を実施した。
14名の被験者に卵1個を含む朝食(ゆで卵、食パン、サラダ、ヨーグルト、フルーツジュース、紅茶)を提供し、4週間毎日摂取させた。また、毎日の食事を記録し、栄養素摂取量を調査した。介入前と比較し、介入期間中の1日のエネルギー摂取量に差は無かったが、たんぱく質エネルギー比及びコレステロール、ビタミンD、ビタミンB12、ビタミンCの摂取量が有意に増加した。食品群別の解析では、菓子類の摂取量が有意に減少した。また、穀類、野菜、魚・肉、乳製品、果物、菓子・アルコール類の摂取量について日本の食事バランスガイドに対する順守率をスコア化した結果、介入前と比較して介入後には合計スコアが高くなった。
介入前後の空腹時血液の分析の結果、血中脂質濃度に有意な変化はなかったが、動脈硬化のリスク因子であるMDA‐LDL濃度が介入後に有意に低下し、LDLの酸化が有意に抑制された。また、血中葉酸濃度が有意に増加した。
以上より、若年女性における朝食での卵摂取は、栄養状態や食習慣の改善に役立ち、特定の抗酸化指標を改善することが示唆された。
文献No.92
シッダ食品市場における卵の脂肪酸組成とω3強化卵の付加価値についての比較研究
Shahida AK et al., Comparative study of fatty-acid composition of table eggs from the Jeddah food market and effect of value addition in omega-3 bio-fortified eggs, Saudi J. Biol. Sci., 2017, 24:929-935
【要旨】
ω-3必須脂肪酸は、健康上有益かつ重要なサプリメントの1つである。サウジアラビアでは、主として過去数十年間での栄養的変遷と生活習慣の変化により、肥満、糖尿病、循環器疾患が驚くほど増加してきている。一般的に消費される食品についての栄養介入は、人々の健康を改善し、医療費を削減する重要な一歩となる。卵はサウジアラビアで頻繁に消費される食品であり、ω-3脂肪酸を強化すれば優れた現状改善策となろう。
本試験では、鶏の飼料に亜麻仁または魚油由来のω3脂肪酸を添加し、採取した卵を分析した。測定項目として、卵黄中の脂肪酸やビタミンE分析および官能評価を行った。亜麻仁または魚油由来のω3脂肪酸を与えた群において、卵中のω3脂肪酸の組成比は対照郡0.42 ± 0.02%に対し、それぞれ5.63 ± 0.82%および5.73 ± 0.21%と有意に増加した。また、ビタミンEも対照群1.1㎎に対し、それぞれ1.79㎎および1.82㎎と軽度ながら増加した。
したがって、ω3脂肪酸の摂取不足は、亜麻仁または魚油源を与えた鶏からのω3強化卵を摂取ことによって改善することができ、消費者のより良い健康に寄与できる可能性がある。ω-3卵は近い将来における市場製品として有望であろう。
文献No.88
幼児期早期の卵摂取はコリン血中濃度を改善する(介入試験)
Iannotti LL et al., Eggs early in complementary feeding increase choline pathway biomarkers and DHA: a randomized controlled trial in Ecuador, Am J Clin Nutr. 2017, 106(6):1482-1489.
【要旨】
コリンは幼児の発育に必須とされている。卵はビタミンや必須脂肪酸を含む高栄養食品でありコリン含量も高いことから幼児の発育不良を改善することが報告されている。本研究では、卵を補助食品として早期に摂取することの有用性を調査するため、エクアドルの乳児(6~9ヵ月)を対象とする介入試験を実施した。対照群(卵無し、83名)と介入群(卵1個、80名)の2群に分け、6ヵ月間介入を行った。食事調査は介入前後に行い、期間中、週1回被験者を訪問し、採血した。介入の結果、対照群と比較し、鶏卵摂取によりコリンおよびコリン代謝に関わる成分(ベタイン、メチオニン、TMAO)の血中濃度が上昇した。TMAOは幼児期における影響は不明である。一方、ビタミンB12、レチノール、リノール酸、α-リノレン酸には対照群と比較し有意な変化は認められなかった。この結果から、幼児期早期の卵摂取は、発育に必要なコリンおよびコリン代謝産物の血中濃度を改善することが示された。
文献No.80
肥満女性の血清ビタミンB12レベルおよび栄養状態(横断研究)
Baltaci D et al., Evaluation of serum Vitamin B12 level and related nutritional status among apparently healthy obese female individuals. Niger J Clin Pract. 2017 , 20(1):99-105. doi: 10.4103/1119-3077.181401.
【要旨】
肥満女性における血清ビタミンB12濃度とBMIおよび栄養状態との関連を調査することを目的とした横断研究。赤肉、魚、牛レバー、卵、キノコの摂取量を調査した。DRIを参考にし、血清ビタミンB12濃度200pg/mL未満を欠乏、250~350pg/mLを不足、350pg/mL以上を充足と判断した。BMIによって肥満群と非肥満群に分け、ビタミンB12濃度と食品摂取量を2群間で比較した。血清ビタミンB12濃度の平均値は247.8±10.4pg/mLであり、卵(p=0.031)、牛レバー(p=0.004)、キノコ(p=0.040)、赤肉(p=0.003)の摂取量と有意な相関があった。また、ビタミンB12濃度は肥満群よりも非肥満群で有意に高かった(282.5±106.8 vs. 242.5±107.5pg/mL、p=0.001)。欠乏者の割合も非肥満群よりも肥満群で有意に高かった(37.6%vs.24.7%、p=0.019)。ビタミンB12濃度は、BMI(r=-0.155; p0.001)と有意な負の相関があったが、インスリン抵抗性(r=-0.172; p=0.062)とは相関がみられなかった。
以上から、肥満女性では、肥満はビタミンB12濃度の低値と相関し、肥満者ではビタミンB12が不足する可能性が高かった。この不足は、卵、赤肉、魚、牛レバー、キノコなどの食品の摂取により補えると考えられる。
文献No.78
ルーマニアの小児のコリン摂取量とその摂取源
Prelicz CR and Lotrean LM,, Choline Intake and Its Food Sources in the Diet of Romanian Kindergarten Children, Nutrients, 2017, 9: 896. doi: 10.3390/nu9080896
【要旨】
コリンは脂質の輸送や代謝、膜の機能などにおいて重要な役割を担う栄養素であり、神経発達や認知機能、がんや心血管疾患にも関わると考えられている。体内でコリンは合成されるものの、その量は限られており、生体に必要な量を満たすためには食事からコリンを摂取する必要がある。米国では食品中のコリン含有量がデータベース化され、1998年にはコリン摂取基準が設けられている。一方で、ヨーロッパでは基準が未だ設定されていない上に、ルーマニアでは国民のコリン摂取量の調査も行われていない。そこで、本研究ではルーマニアにおける小児の食物由来のコリン摂取量を調査した。
71名の幼稚園に通う小児(4~6歳)を対象とし、3日間の食事記録からコリン摂取量を算出した。その結果、平均摂取量は215mg/日であり、約23%の小児しか米国の4~6歳の摂取目安量である250mg/日を満たしていないことが分かった。約90%の小児は少なくとも170mg/日のコリンを摂取していた。なお、男女間での有意な差はなかった。また、コリンの主な摂取源は肉類(主として家禽)、卵、穀類、酪農製品(主としてミルク)であり、全体の75%を占めていた。適切な量のコリンを摂取するには、少なくとも3日に1個の卵、1日に2人前の乳製品(牛乳あるいはヨーグルト500mL/日またはチーズ60g/日)および少なくとも1日に1人前の肉(90g/日)を食べることがロジスティック回帰解析において有意な相関を示した。ルーマニアの小児では、卵や肉類はコリンを手軽に摂取するのに役立つと言える。
したがって、適当な量のコリンを含む食品を小児に食べさせるよう推奨するとともに、コリン摂取に関する調査を今後さらに進める必要がある。
文献No.76
途上国での給食プログラムにおける卵の補給効果
Baum J et al., The effect of egg supplementation on growth parameters in children participating in a school feeding program in rural Uganda: a pilot study. Food Nutr. Res., 2017; 61(1): 1330097. doi: 10.1080/16546628.2017.1330097.
【要旨】
途上国の多くの小児ではタンパク質エネルギー栄養失調が懸念されるが、微量栄養素不足はより普遍的な問題である。卵は微量栄養素と高栄養価のタンパク質の安価な供給源であり、不足を補充するのに適している。現在途上国では、学校給食プログラムが普及しており、今回、ウガンダの農村部の学校給食プログラムに参加している小学生の成長に及ぼす卵の補給の効果について、予備的なデータを得ることとした。
6~9歳(n=241人)の子供を、ウガンダのキッギャム地区全体にある3つの異なる学校から募集した。同じスクールのすべての参加者を、それぞれコントロール(卵なし群、n=56)、週5日間卵を毎日1個食べる群(卵1個群、n=89)、または週5日間卵を毎日2個食べる群(卵2個群、n=96)に割り付けた。身長、体重、上腕三頭筋皮下脂肪厚(TSF)および上腕中心部周囲長(MUAC)を6ヵ月間毎月測定した。
その結果、6ヵ月の卵補給後、卵2個群は、卵なしおよび卵1個の群と比較して、身長および体重の増加が大きかった(p<0.05)。さらに、卵1個および卵2個群の参加者は、卵なし群と比較して6ヵ月でMUACが有意に増加した(p<0.05)。
これらの結果は、卵を補給することで、ウガンダの農村部の学校給食プログラムに参加している児童の成長パラメータを改善できることを示唆している。卵の補給が栄養状態や認知発達に及ぼす影響を明らかにするため、また長期間学校給食プログラムに卵の補給を実施する可能性を判断するために、さらなる研究が必要である。
文献No.75
アメリカにおける食物由来コリン摂取量の調査
Wallace T C et al., Usual choline intakes are associated with egg and protein Food consumption in the United States, Nutrients, 2017, 9: 839. doi: 10.3390/nu9080839
【要旨】
コリンは生体において重要な役割を担う必須栄養素である。しかし、コリンの摂取目安量が米国で設定された当時、多くの人がコリン摂取不足であることはあまり知られていなかった。また、食品中のコリン含有量が明らかにされたのは最近のことである。そこで、卵、タンパク質食品(肉や魚介類)、サプリメントといった食物由来のコリンの摂取量について調査するため、NHANES(米国の健康栄養調査) に登録されている24,774名(2009~2014年)および593名の妊婦(2005~2014年)の食事調査結果を用いて評価を行った。
多くの性別・年齢層でコリンの摂取が不足しており、約8%の成人と約9%の妊婦しか摂取目安量に達していないことが分かった。2~3歳の小児、続いて4~8歳の小児の摂取量が最も目安量に近かった。19歳以上の成人については、卵を消費する人(NHANESによる調査で、一日の食事に卵が含まれていた人)では約57%、消費しない人では約2%の人が目安量に達しており、コリン摂取量については卵を消費する人(525±5.17 mg/日、平均値±標準誤差)は消費しない人(294±1.98mg/日)のおよそ2倍であった(p<0.0001)。肉や魚介類などのタンパク質が豊富な食品を消費しない人ではコリン摂取量が235±8.81mg/日であるのに対し、消費する人では345±2.21 mg/日であり、タンパク質食品はコリン摂取の増加に寄与するが目安量に達するまでには至らなかった。なお、コリンの許容上限摂取量を超える性別・年齢層はなかった。
本研究から、卵の消費なくしてはコリンの摂取目安量を達成することは困難であることが示唆される。
文献No.70
卵の追加で健康的な食品の摂取が増加(介入試験)
Njike VY et al., Which foods are displaced in the diets of adults with type 2 diabetes with the inclusion of eggs in their diets? A randomized, controlled, crossover trial, BMJ Open Diab. Res. Care, 2017;5:e000411. doi:10.1136/bmjdrc-2017-000411
【要旨】
2型糖尿病患者の食事に卵を追加もしくは除去することにより、他の食品の摂取量にどのような影響があるのかを調べるため、2型糖尿病の米国人男女34名(64.5±7.6歳)を対象とした単盲検ランダム化クロスオーバー試験を実施した。通常の食事の一部として卵2個/日を摂取する群、あるいは卵を除いた食事を摂取する群に分け、各12週間摂取した(ウォッシュアウト期間は6週間)。食事については栄養士が指導をし、カロリーが両群で同程度になるようにした。介入前と介入中の食事調査を行った結果、卵摂取期間では卵除去期間と比較し、精製穀物摂取量に減少傾向が認められた(?0.7±3.4 vs 0.7±2.2; p=0.0530)。また、介入前と比較した場合、卵摂取期間に総タンパク質摂取量が有意に増加した(0.3±0.7; p=0.0153)。卵除去期間には乳製品摂取量が有意に減少した(?1.3±2.9; p=0.0188)。その他の食品摂取量に有意な変化はなかった。以上の結果から、2型糖尿病患者の食事に卵を追加することは、健康的な食品の摂取を増加させ、非健康的な食品の摂取の減少につながる可能性が示された。
文献No.59
卵白のタンパク質利用率は加熱をしても変わらない
Matsuoka R et al., Heating Has No Effect on the Net Protein Utilisation from Egg Whites in Rats. Scientific World Journal, 2017; 2017: 6817196, doi: 10.1155/2017/6817196.
【要旨】
卵白はタンパク質の優れた供給源であるが、ほとんどは加熱して摂取される。そこで、加熱条件の違いが卵白のタンパク質利用率に及ぼす影響を調べた。雄SDラット(N = 36、198±1g)を6つのグループに分けて、タンパク質として、非加熱卵白、ソフトボイル卵白(加熱65℃×5分)、ボイル卵白(加熱95℃×10分)、乳清タンパク質、大豆タンパク質、またはそれらを含まない群に分けて、AIN-76飼料で、10日間にわたり飼育した。窒素含有量および正味タンパク質利用率(NPU*)を測定するために、尿および糞便を5日目から毎日サンプリングした。大豆タンパク質群は、摂取量が有意に低かったので、その後の分析から除外した。大豆タンパク質はカゼインよりもメチオニンが少なく、メチオニンが少ない給餌を与えられた成長期のラットでは摂取量が減少することや、大豆タンパク質は食欲を減少させるホルモンであるコレシストキニンの分泌を促進することなどが原因と考えられる。
NPU値(%)は、非加熱群、ソフトボイル卵白群、およびボイル卵白群それぞれ、97.5±0.4、96.5±0.1、および96.5±0.7であり、乳清タンパク質群の値(90.5±1.0)より有意に高かった。これらの結果は、卵白が加熱に関係なく、タンパク質の良好な供給源として利用されることを示している。
*正味タンパク質利用率(NPU):摂取したタンパク質(窒素)のどれだけの割合が体のタンパク質(窒素)として保持されたかを表す値(%)
正味たんぱく質利用率(NPU)=( 体内保留窒素量 / 摂取窒素量 )× 100 (%)
文献No.50
卵や家禽肉の栄養学的特徴
Kralik G et al., Poultry products enriched with nutricines have beneficial effects on human health., Med Glas (Zenica), 2017 Feb 1;14(1). doi: 10.17392/879-16.
【要旨】
著者の住むクロアチア共和国では、家禽肉の平均消費量は1人当たり18.3kgであり、卵は160個である。ブロイラー肉の最も質の高い部分は、むねとドラムスティック(もも)である。むね肉は21-23%のタンパク質、1.90-1.97%の脂肪、および0.74-0.77%のコラーゲンを含有する。ドラムスティックは、19.03-19.93%のタンパク質、4.70-6.05%の脂肪、および0.91-1.13%のコラーゲンを含有する。白身肉(むね)には、赤身肉(もも)よりも多くのカリウムとマグネシウムが含まれ、亜鉛と鉄が少ない。卵可食部100gあたりのエネルギーは167 Kcalであり、12.5-13.5gのタンパク質、10.7-11.6gの脂肪および1.0-1.1gのミネラルが含まれる。また、ロイシン、イソロイシン、リジン、アルギニン、バリン、フェニルアラニンなどの必須アミノ酸が多く含まれている。さらに、卵は多くのビタミン、特にA、D、E、KおよびB群、ならびに種々の多量元素(ミネラル)および微量元素(ミネラル)を含む。n-3系多価不飽和脂肪酸(エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸)、セレン、ルテインなどの機能性成分を豊富に含む卵や肉は、人間の健康にとっての付加価値と利益のための機能性食品としての基準を満たしている。
文献No.39
卵はビタミンEの吸収を促進(介入試験)
Kim JE et al., Egg Consumption increases Vitamin E absorption from co-consumed raw mixed vegetables in healthy young men. J. Nutr., 2016, doi : 10.3945/jn.116.236307.
【要旨】
ビタミンEは天然に存在する脂溶性の栄養素であり、その抗酸化活性および抗炎症活性から循環器疾患、特定のがん等の慢性疾患の予防に寄与することが知られている。本研究では、卵を野菜と合わせて食べることによるビタミンEの吸収への影響を検討した。健常な男性16名(mean±SD;年齢24±4歳、BMI 24±2 kg/m2)にサラダ(菜種油3 gを加えたもの)+卵0 g (control : CON)、サラダ+調理した卵75 g(low-egg : LE)、またはサラダ+調理した卵150 g(high-egg : HE)を摂食させ、10時間にわたり1時間毎の血中α-トコフェロール濃度および血中γ-トコフェロール濃度を測定した。血中α-トコフェロール濃度の0-10時間における曲線下面積(AUC)は、HE群(mean±SE:981±162 nmol/L・10h)が他の群(CON : 117±162 nmol/L・10h, LE : 311±162)と比較して有意に高値を示した。血中γ-トコフェロール濃度のAUCもまたHE群(402±54 nmol/L・10h)で、CON群(72±54 nmol/L・10h)と比較して有意に高値であった。以上のことから、卵の摂取は健常な男性においてビタミンEの吸収を促進させる効果的な方法と見なされた。
文献No.37
ビタミンD強化卵で冬季のビタミンD不足解消の可能性(介入試験)
Hayes A et al., Vitamin D-enhanced eggs are protective of wintertime serum 25-hydroxyvitamin D in a randomized controlled trial of adults. Am. J. Clin. Nutr., 2016, 104:629-637.
【要旨】
デンマークでの研究。ビタミンD合成量が少ない冬期(1~3月)におけるビタミンD強化卵摂取の効果を確認するため、健常成人55名を対象としたRCTを実施した。被験者は、通常卵(総VD含量:3.43±1.31μg/egg)≦2個/週(対照群)、ビタミンD3強化卵(総VD含量:3.54±1.04μg/egg)7個/週(VD3群)、25(OH)D3強化卵(総VD含量:4.54±1.38μg/egg)7個/週(25(OH)D3群)の3群に分け、8週間摂取。試験前の血中25(OH)D3濃度に有意な群間差は無かったが、対照群ではVD3群、25(OH)D3群と比較し血中濃度が7~8 nmol/L低かった。8週間の卵摂取の結果、対照群では血中VD濃度が有意に減少したのに対し、VD3群、25(OH)D3群では血中濃度が減少せず、対照群に対して有意な群間差が見られた。この結果から、7個/週のビタミンD強化卵の摂取は、成人の冬期におけるビタミンD維持に重要な役割を果たすことが期待できる。
文献No.35
鉄欠乏性貧血に卵白が効果あり(動物試験)
Kobayashi Y et al., Egg yolk protein delays recovery while ovalbumin is useful in recovery from iron deficiency anemia. Nutrients. 2015, 7:4792-4803.
【要旨】
鉄欠乏性貧血(iron deficiency anemia, IDA)における卵タンパク質の有効性について検討した。SD系雌ラット31匹を、通常食を与える対照群(カゼイン)(4.0mg Fe/100g, n=6)と低鉄食を与えるIDA群(0.4 mg Fe/100g, n=25)に分け42日間飼育した。IDA群は、21日間の飼育後、卵白群(n=6)、オボアルブミン群(n=7)、卵黄群(n=6)、カゼイン群(n=6)に分け、それぞれの飼料(いずれも100gあたり 4.0mgの Feを含む)で21日間飼育した。卵黄群では、ヘマトクリット、ヘモグロビン、トランスフェリンの飽和度、肝臓鉄量の回復が他の群よりも有意に遅かった(p<0.05)。卵黄中のホスビチンが鉄と結合し吸収を妨げたと考えられた。一方、卵白群およびオボアルブミン群では、肝臓鉄量がカゼイン群よりも高くなった。この結果から、卵白はIDAからの回復に有用であり、オボアルブミンがその関与成分の一つである可能性が示唆された。なお、卵黄については、鉄の過剰蓄積により組織損傷を引き起こすヘモクロマトーシス(血色症)などの疾患において、鉄除去治療に利用できる可能性が考えられた。
文献No.24
調理法によって卵カロテノイドの吸収が変わる(in vitro)
Chamila N et al., Bioaccessibility and digestive stability of carotenoids in cooked eggs studied using a dynamic in vitro gastrointestinal model. J. Agric. Food Chem., 2015, 63: 2956-2962.
【要旨】
加熱調理が卵のカロテノイド(ルテイン、ゼアキサンチン)の消化と生体利用性(吸収)に及ぼす影響を明らかにするため、一般的な家庭調理法である茹で卵、目玉焼き、スクランブルエッグの3方法で卵を調理し、人工消化管モデル(TIM-1)を用いて検討した。その結果、ルテインとゼアキサンチの消化安定性は調理法の影響を受けなかった(平均回収率はそれぞれ90%と88%)。消化中にトランス・シス異性化は観察されなかった。しかし、生体利用性には調理法による差がみられ、茹で卵、目玉焼きでは41%~45%程度であるのに対し、スクランブルエッグではルテインが39%、ゼアキサンチンが24%で有意に低くなった。これらの結果から、卵に含まれるカロテノイドの吸収は、調理方法による影響を受けることが分かった。
文献No.12
ルテイン強化卵は血中脂質に影響を与えずルテイン濃度を増加(介入試験)
van der Made S MN et al., Consuming a buttermilk drink containing lutein-enriched egg yolk daily for 1 year increased plasma lutein but did not affect serum lipid or lipoprotein concentrations in adults with early signs of age-related macular degeneration. J. Nutr., 2014, 144: 1370-1377.
【要旨】
加齢性黄斑変性症の初期兆候がある50才以上のオランダ人88名を2群に分け、1年間毎日、ルテイン強化卵黄1.5個を加えたバターミルク、もしくはバターミルクのみを飲む無作為化比較試験を行った。その結果、ルテイン強化卵黄を摂取した群では血漿中ルテイン濃度が有意に増加(バターミルクのみの場合の83%増)した。しかし、血清コレステロール(Chol)濃度および総Chol/HDL-Chol比には有意な差は認められなかった。campesterolとlathosterolの血中濃度比が低い(コレステロール吸収タイプ)、高い(合成タイプ)、および中間の3群に分け比較すると、コレステロール吸収タイプでは、血漿ルテイン濃度だけでなくHDL-Cholもより顕著に増加した。このように、コレステロール吸収タイプでは、ルテイン強化卵黄を加えたバターミルクの摂取効果が最も大きいと考えられる。
文献No.11
卵の摂取量は食事の質と関連あり
Sonia Vega-Lopez S et al., Egg intake and dietary quality among overweight and obese Mexican-American postpartum women. Nutrients., 2015, 7: 8402-8412
【要旨】
産後の女性における栄養摂取状況や食事の質への鶏卵の寄与の程度を評価するため、産後のメキシコ系アメリカ人女性(28±6歳、BMI 29.7±3.5 kg/m2)を卵消費者81名(摂取量 >0個/日)と非消費者57名の2群に分け調査した。栄養素摂取状況と食事の質については、Alternative Healthy Eating Index 2010 (AHEI2010、米国での評価基準)によって評価した。その結果、卵消費者では非消費者と比較し、エネルギー、タンパク質、脂質、一価不飽和脂肪酸、その他微量栄養素の摂取量が多く、タンパク源となる食品や果物の摂取量もより多い傾向が認められた。つまり、卵の摂取は産後のメキシコ系アメリカ人女性の食事の質を改善することが示唆された。なお、卵消費者ではエネルギー摂取量も多い傾向にあるため、過体重および肥満者に対しては、過剰なエネルギー摂取は避け、食物繊維を多く含む食事に卵を組み合わせることを推奨している。
文献No.3
卵黄は血中カロテノイド濃度を改善(介入試験)
Christopher N. Bless et al., Egg intake improves carotenoid status by increasing plasma HDL cholesterol in adults with metabolic syndrome. Food. Funct., 2013, 4:213?221.
【要旨】
Metabolic syndrome(MetS)と診断されたアメリカ人男女40人を対象に、12週間にわたって、毎日全卵3個を食べる群(EGG群)と卵黄を含まない同量の卵代替物を摂取する群(SUB群)に分けて血中カロテノイドに与える影響を評価した。なお、試験期間中は、すべての被験者に糖質制限食を摂ってもらった。その結果、EGG群では、血中ルテイン、ゼアキサンチンがSUB群と比較して有意に上昇した。また、HDLおよびLDL中のルテイン、ゼアキサンチンについてもSUB群と比較して有意に上昇していた。卵黄は心血管疾患や糖尿病リスクが高い方にとって、血中カロテノイド濃度を改善する重要な供給源であることが示された。
文献No.1
卵はカロテノイドの吸収を促進する(介入試験)
Jung Eun Kim et al., Effects of egg consumption on carotenoid absorption from
co-consumed, raw vegetables. Am J Clin Nutr., 2015, doi: 10.3945/ajcn.115.111062.
【要旨】
健康で若い成人男性16名を対象に、野菜のみ摂取する群、野菜と卵75gを摂取する群、野菜と卵150gを摂取する群の3群に分けて、血中のカロテノイド(ルテイン、ゼアキサンチン、αカロテン、βカロテン、リコペン)の推移を10時間確認した。摂取したカロテノイドはほとんどが野菜に含まれていた。血中カロテノイド量合計は、野菜のみ摂取する群、野菜と卵75gを摂取する群、野菜と卵150gを摂取する群の順に多くなり、野菜と卵150gを摂取する群は他の2群より有意に高値を示した。
野菜と卵を一緒に摂取する事でカロテノイドの吸収を促進する事が示された。